当院は、眼形成外科の中でも特に「まぶた(眼瞼)」の手術を専門に行っております。まぶたの手術は高度な専門技術を要する領域であり、専門外来を開設しているクリニックは限られています。当院では、大学病院など遠方まで足を運ばずとも、専門的な治療を受けていただけます。
まぶたの疾患においては、まず機能を正常な状態に戻し、症状を改善することが最も重要と考えています。その上で、負担をできる限り抑え、やり過ぎない適度な手術を目標とし、整容面(見た目)にも配慮した治療を行っています。
治療は健康保険適用の手術を中心に行っております。一部、保険が適用されない手術もございますが、都内で高額に設定されている美容手術についても、安心して受けていただけるよう低料金で提供しております。なお、自費手術を無理にお勧めすることはありませんので、どうぞご安心ください。
対象疾患
- 眼瞼下垂症(先天性眼瞼下垂 / 後天性眼瞼下垂)
- 下眼瞼内反・外反症 / 睫毛内反・乱生症
- 重瞼術(ふたえ) / 目頭切開
- 下まぶたのたるみ
- 顔面神経麻痺
- その他の眼形成手術
眼瞼下垂症
眼瞼下垂症とは、上まぶたが十分に持ち上がらない状態を指します。先天的に発症する場合もありますが、多くは加齢や外力(白内障手術後、コンタクトレンズの長期装用、アトピー性皮膚炎による頻繁なまぶたのこすりなど)によって生じる後天性眼瞼下垂です。
後天性眼瞼下垂にはいくつかのタイプがあります。
腱膜性眼瞼下垂:上まぶたを持ち上げる役割を担う眼瞼挙筋腱膜(挙筋腱膜)が薄くなったり、機能が低下したりすることで起こる
皮膚弛緩性眼瞼下垂:皮膚がたるんで垂れ下がり、瞳をカーテンのように覆ってしまう状態
老人性眼瞼下垂:特に加齢によって生じる腱膜性または皮膚弛緩性の眼瞼下垂
眼瞼下垂の病態

眼瞼下垂では、上まぶたが十分に上がらず、視界が狭くなり物が見えにくくなることが最も一般的な症状です。
それ以外にも、上まぶたを持ち上げようとして無意識に眉毛を上げてしまうため、額にしわが寄りやすくなったり、頭痛や肩こりが生じたり、自律神経のバランスが崩れ、不眠、うつ症状、便秘などの全身症状が現れることもあります。
また、二重まぶたのラインが乱れたり、幅が広がるといった症状も起こることがあります。
眼瞼下垂によるミュラー筋への刺激

近年、眼瞼下垂は上まぶたの神経(動眼神経・交感神経)や筋肉(眼瞼挙筋・ミュラー筋)の異常によって、肩こりや頭痛などの全身症状と関連していることが指摘されています。
実際に、眼瞼下垂の手術を受けられた患者さまの多くで、こうした症状の軽減が認められています。
このように、見た目や視界の改善だけでなく、生活の質(QOL)を向上させることもできる点が、私がこの手術に力を入れている理由の一つです。
※ミュラー筋は、挙筋腱膜と結膜の間に位置する筋肉で、交感神経に関与するとされています。
眼瞼下垂の手術
眼瞼下垂の手術には、大きく分けて3つの方法があります。
- 挙筋腱膜前転術:緩んだり弱くなった眼瞼挙筋(挙筋腱膜を含む)を補強し、まぶたの開きを改善する方法
- 眉毛下皮膚切除術(上眼瞼リフト):視野障害の原因となっている上まぶたの余分な皮膚を、眉毛の下で切除する
- 筋膜移植術:先天性眼瞼下垂など、眼瞼挙筋の機能が重度に障害されている場合に行う方法で、瞼板を吊り上げてまぶたを開く
このほか、症状によっては切らない埋没法なども適応可能です。
当院では、ひとつの術式にこだわらず、患者さまの症状やご希望に合わせて最適な方法を選択しています。ご不明な点は、どうぞ遠慮なくご相談ください。
挙筋腱膜前転術
ふたえ(二重)のラインに沿ってまぶたの皮膚を切開し、緩んだ挙筋腱膜を引き出して元の位置に固定します。必要に応じて余分な皮膚を切除し、二重のラインを整えます。傷跡は二重のラインに隠れるため、目立ちにくくなります。
手術時間はおよそ1時間です。まぶたは血管が豊富なため、術後1週間ほどは強くぶつけたような腫れが出ます。手術から1週間後に抜糸を行い、その後は時間をかけて全体のむくみが徐々に改善していきます。
当院では、なるべく血管や正常組織を傷つけないよう丁寧に操作し、腫れを最小限に抑えるよう心がけています。また、無理な挙上しすぎずに、形がいびつにならないよう細心の注意を払いながら手術を行っています。
眼瞼下垂手術(挙筋腱膜前転術)
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皮膚に切開を入れ、必要に応じて一部を切除 -
眼窩隔膜に切開を入れ、拳筋腱膜に達する -
緩んだ拳筋腱膜を引き出す -
拳筋腱膜を正常な場所に固定しなおす -
拳筋腱膜を瞼板に固定し上瞼が持ち上がる
症例(右眼瞼下垂)
眼瞼下垂の手術は、一般的には両目に行う患者さまが多いのですが、ここでは左右差が分かりやすいよう、片目のみを手術した症例写真をご紹介します。
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手術前右眼に眼瞼下垂を認めます。
※左眼にも軽度の下垂がありますが、ご本人と相談のうえ、右眼のみ手術を行いました。 -
手術直後右眼に対して眼瞼下垂手術(挙筋腱膜前転術)を行いました。
手術直後のため、まぶたにやや腫れが見られます。 -
術後1週間(抜糸時)まぶたの腫れもだいぶ落ち着きました。
現在はやや腫れぼったい二重ですが、数か月かけて自然な形に改善していきます。
眉毛下皮膚切除(上眼瞼リフト)
眉毛の下で余分な皮膚を切除する手術です。当院では、眼輪筋(目の周囲の筋肉)を一部タッキング(吊り上げ)することで、より確実に効果が持続するよう工夫しています。
この方法は、まぶたのラインにメスを入れないため腫れが少なく、目元の印象の変化も控えめなのが特徴です。挙筋の機能がある程度保たれており、皮膚のたるみ(皮膚余剰)が主な原因となっている患者さまに適しています。
傷跡は眉毛の下に位置するため、女性はお化粧でほとんど目立たなくなります。男性の場合も眉毛に隠れるため、術後に傷跡が気になる方は少ないです。
手術時間はおよそ1時間で、抜糸は1週間後に行います。美容目的で行われることも多く、視界やまぶたの改善とともに、目元の印象が若返るという副次的な効果も期待できます。
眉毛下皮膚切除の流れ
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上瞼の皮膚がたるみ、
眼球に皮膚が被っている -
眉毛下の皮膚を切除する -
皮膚をリフトアップし、
眉毛下で縫合する
症例:眉毛下皮膚切除術
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手術前外側を中心に上まぶたの皮膚が覆い被さっています。
また目の開き具合もやや弱いです。 -
手術デザイン外側を広めに眉毛下の皮膚を切除します。 -
手術後上まぶたの皮膚のかぶさりが改善しています。
また目の開きもやや大きくなっています。傷跡は眉毛に隠れて目立ちません。
下眼瞼内反症・睫毛内反症
下眼瞼やまつ毛が内側に向かって生え、眼球表面(角膜など)を傷つけてしまうことで、痛みや違和感を生じる疾患です。
睫毛内反(しょうもうないはん)
多くは先天性(生まれつき)で、幼少期の軽症例では自然に改善することもあります。しかし、角膜びらんが強い場合や痛みがある場合、また成人になっても改善がみられない場合は手術が必要です。
当院では、糸を埋め込む通糸埋没法や、皮膚を切除する皮膚切開法などに対応しています。若い患者さんが多いため、症状の改善だけでなく、整容面(見た目)にも配慮した手術を心がけています。
下眼瞼内反症
(かがんけんないはんしょう)
まつ毛だけでなく、下まぶたの瞼板自体が内側に傾く状態で、高齢者に多く見られます。原因は、下まぶたを支える筋膜(LER:下眼瞼牽引筋筋膜)の緩みと考えられています。
改善には手術が必要で、さまざまな方法がありますが、比較的再発しやすい疾患です。当院では、LERの処理を確実に行い、必要に応じて眼輪筋や皮膚のたるみも改善することで、再発のリスクを抑えるよう努めています。
これらの手術は、角膜など眼球表面を保護することが大きな目的です。そのため、眼科との連携が非常に重要です。眼球表面の詳細な診察が可能な眼科への受診をおすすめしており、当院からの紹介も可能です。
下眼瞼内反手術
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正常な下眼瞼 -
下眼瞼内反の状態 -
腱膜(LER)を引き上げ、瞼板に再固定
症例:下眼瞼内反手術
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下まぶたが内反(眼球側に反転)し、睫毛が眼球表面を刺激しています。(矢印部分)
この状態を放置すると眼球の角膜が傷つけられてしまいます。 -
内反が改善し睫毛が外側を向いています。下まぶたの傷跡もほとんど目立ちません。
下まぶたのたるみ・眼窩脂肪ヘルニア
下まぶたのたるみや膨らみの主な原因は、眼窩脂肪です。加齢や外傷、遺伝的な要因などによって、眼窩脂肪を包んでいる膜が弱くなり、脂肪が前方に突出します。脂肪が眼球側に突出した場合は眼窩脂肪ヘルニアと呼ばれ、結膜を傷つけたり、異物感の原因になることもあります。
下まぶたのたるみは自然に改善することは難しく、治療には手術が必要です。ただし、手術による改善効果は高く、多くの患者さまで見た目と症状の両面で改善が期待できます。
手術方法には、下記のようなものがあります。
経結膜法:まぶたの裏側(結膜側)を切開し、脂肪を除去する方法
経皮法:まぶたの縁から切開して脂肪を除去する方
まぶた裏の切開は皮膚表面に傷が残らないため、見た目に配慮でき、腫れや負担も少なめです。当院では主にこの方法を採用しています。
結膜側から脂肪を除去するだけの方法であれば、術後の腫れが軽く、回復も比較的早いためおすすめです。
眼窩脂肪除去術
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皮膚・腱や筋肉のゆるみ
→脂肪が突出し、たるむ -
まぶたの裏側に切開を入れ、脂肪を取り除く -
皮膚表面にはメスを入れないので傷は目立たない
皮膚のたるみが主な原因の場合は皮膚切除が必要ですが、下まぶたの縁に沿って切開するため、傷跡は目立ちにくいです。
また、整容面を重視し、脂肪を取り除かずに移動させるハムラ法(眼窩脂肪移動術)も行っています。
当院では、経結膜脱脂、経結膜的眼窩脂肪移動術(裏ハムラ)、下眼瞼除皺術など、さまざまな術式に対応可能です。保険適応外の場合でも、低価格でご提供しておりますので、お気軽にご相談ください。
眼窩脂肪移動術(ハムラ法)
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皮膚または粘膜に切開を入れ、眼窩隔膜の骨付着部を剥がす(深い下眼瞼のしわ=骨付着による) -
眼窩隔膜の骨付着部および脂肪を下方向に移動することで、脂肪突出の改善・しわの消失が得られる
皮膚表面の切開からアプローチ:通称・表ハムラ法
粘膜側の切開からのアプローチ:通称・裏ハムラ法
症例:眼窩脂肪が眼球側に突出している症例
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手術前眼窩脂肪ヘルニアにより、眼球の結膜(白目の部分)に黄色い脂肪が露出しています。 -
手術後比較的簡単な局所麻酔日帰り手術で黄色い部分が消失します。
症例:下まぶたのたるみ
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眼窩脂肪の突出による、下まぶたのたるみが目立ちます。この症例では、皮膚表面からアプローチし下まぶたの脂肪を処理しました。 -
術後1週間の状態です。まだ少し内出血の跡が目立ちます。傷後は目立たないです。
下まぶたのたるみが改善していることがわかります。
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手術後1ヶ月術後1か月の状態です。傷跡も目立たず内出血も改善しています。
すっきりとした下まぶたになっているのがわかります。
重瞼術(ふたえ・二重の手術)
日本人(東洋人)は、一般的に上まぶたの皮膚が厚く、皮下脂肪も発達しているため、二重のラインがつきにくく、一重まぶたや奥二重まぶたの方が多いと言われています。
そのため「二重になりたい」と希望される方は多く、まぶた用化粧品やテープなどで二重を作っている方も少なくありません。
二重まぶたの手術は保険適応外ですが、切らずに行える「埋没法」は、費用が比較的安く、侵襲も少ないためおすすめできる施術です。
一方で、日常的にテープや二重用の糊を使用すると、まぶたに想像以上の負担がかかります。毎日刺激を与え続けることで皮膚が徐々にたるみ、年齢とともに皮膚の余剰が目立つ原因となることがあります。
二重(ふたえ)と一重(ひとえ)の違い
二重まぶたは、まぶたの皮膚が瞼板前組織と癒着していることで、目を開けた際に癒着部分が奥へ引き込まれ、二重のラインが形成されます。
一方、一重まぶたはこの癒着がない、もしくは弱いため、皮膚が引き込まれず、一重となります。
手術では、この癒着を人工的に作ることで二重まぶたを形成します。方法には、糸で固定する「埋没法」と、皮膚を切開する「切開法」があります。
切開法はより確実に二重を作ることができますが、埋没法は徐々に糸の固定が緩み、時間の経過とともに二重が消失する可能性があります。
二重の手術の仕組み(埋没法)
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開瞼時
(目を開けている)
一重まぶた(手術前) -
閉瞼時
(目を閉じている)
皮膚と瞼板を糸で固定 -
開瞼時
(目を開けている)
二重まぶた(手術後)
埋没法
一般的に図のように2点を糸で固定する方法が用いられています(2点留め)。しかしこの方法では点と点で組織をつなぐので、外れ易いという欠点があります。3点4点と増やしても点で固定しているというデメリットは残ります。
一般的な二重(ふたえ)の手術(2点留め)
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皮膚と瞼の裏側を糸で固定する。 -
点で固定しているため外れやすい。
当院の二重(ふたえ)の手術
当院では、図のように糸を通して「線と線で固定する方法」を採用しています。
この方法は、一般的な2点留めと比べて二重が外れにくく、より確実に二重を形成できるのが特徴です。
まぶたの状態によっては、より複雑な糸の通し方を行う場合もありますが、複雑にすればするほどまぶたへの負担(侵襲)が大きくなります。そのため、必ずしも複雑な方法が最良とは限りません。
当院では、患者様一人ひとりのまぶたの状態に合わせて、最適な方法をご提案いたします。
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埋没糸は基本は皮膚側で縫合しますが、ご希望があれば瞼板側も選択可能です。 -
面(線)で固定しているため外れにくい。 -
複雑な方法が必ずしも最適とは限らないと私は考えています。
(侵襲は最小限が良い) -
症状に応じて、より強固な固定法を選択します。
- 埋没法には、糸をかける位置によって「瞼板法」と「挙筋法」があります。挙筋法は術後しばらくは問題なく見えますが、挙筋腱膜下にあるミュラー筋へ侵襲が加わることで、長期的に悪影響を及ぼす可能性があります。私はこれまで、他院で行われた挙筋法術後の修正手術を多数経験しており、その経験からも挙筋法はおすすめしておりません。
切開法
より確実に二重を作成したい場合は「切開法」を選択します。
皮膚の余剰が少ない若い方であれば、短い切開線で二重を形成できる「小切開法」が可能です。
一方、皮膚切除が必要な場合や、目頭切開などを併用する場合には、大きくメスを入れる「全切開法」を行います。
切開法は、埋没法に比べて腫れが落ち着くまでに時間がかかるため、長期休暇に合わせて施術されることをおすすめします。
当院では、一般的な美容クリニックより低めの料金設定ですが、埋没法よりは費用が高くなります。
そのため、まずは埋没法を試し、すぐに外れてしまう場合やご希望の二重が維持できない場合に、切開法を検討するという選択も有効だと考えています。
その他の眼形成外科手術
上記の疾患以外にも、顔面神経麻痺などによって生じるさまざまな眼症状の改善や、その他外眼部の手術にも対応しています。
まぶたに関するお悩みがある方は、ぜひご相談ください。
- なお、涙道疾患には対応しておりません。
顔面神経麻痺による眼症状に対する手術例
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- 顔面神経麻痺により、まぶたを閉じる筋肉である眼輪筋が麻痺すると、上眼瞼閉瞼障害(目が閉じにくい)や下眼瞼外反(下まぶたが下がってしまう)などの症状が生じます。
その結果、目が乾燥し、角膜の隔膜障害によって白濁がみられることがあります。 -
- 治療として、上まぶたがしっかり閉じられるよう、上眼瞼にゴールドプレートを移植※し、閉瞼機能を改善しました。
また、下眼瞼外反手術(瞼板縫縮)を行い、下まぶたの外反も改善。これにより、まぶたが確実に閉じられる状態となりました。その後、目の表面が十分に保護されていることを確認し、埼玉医科大学病院眼科にて角膜移植を実施していただきました。
- 金(ゴールド)は異物反応(アレルギー反応)を起こしにくく、この手術でよく用いられます。